鍋の中でも一番扱いやすく丈夫といわれる「ステンレス鍋」。 でも「うっかり焦がしてしまった!もうあきらめるしかない?」、「使ってるうちに変な色になったけど、買い替えるべき?」など、長く使っている間にさまざまなトラブルに悩むこともあるかと思います。 というわけで、今回は「お手入れ方法」や「やってはいけないこと」、「変色の原因」などをくわしく解説していきます。
ステンレス鍋のいいところって? 他の鍋との違い
一般家庭で使われている鍋の中でも特にメジャーな存在、ステンレス鍋。他の鍋とどう違うのか、まずその特徴をご紹介します。
サビにくい
ステンレスを英語でいうと「stainless steel」。つまり「サビにくい鉄」という意味です。
ステンレスは、鉄(元素記号:Fe)にクロム(Cr)やニッケル(Ni)が加えられた鉄合金のことで、サビに弱い鉄に代わる「新しい金属」として発明されました。ステンレスがサビにくいのは、ステンレスに含まれるクロム(Cr)が空気中の酸素と結びついてステンレスの表面にバリア(不動態皮膜)を作って、サビの発生を防いでくれているからです。
ステンレスはクロムの量が多いほど不動態を形成しやすく、ニッケルが含まれていると更に不動態を形成しやすくする働きをしてくれます。なので、クロムやニッケルを多く含むステンレスほどサビにくいということになります。
水切りラックやザル、水筒などキッチンツールによく使われているのは、サビにくいという理由があるからです。
他の鍋に比べて丈夫
ホーロー鍋はガラス質でできており、衝撃に弱く急激な温度変化に弱いという特徴があります。また、アルミ鍋は軽くて扱いやすいものの、酸やアルカリ性に弱く、お酢を使った料理を作るのには適していません。
これらの鍋に比べてステンレスの鍋は衝撃に強く、変形しにくいという特徴があります。
保温性が高い
ステンレスは熱伝導が低いので、冷めにくく保温性が高いのが特徴です。保温保冷機能のあるマグカップや水筒にステンレスが使われているのもこのため。
ステンレスの鍋では
- パスタや野菜をゆでる
- シチューやカレー、ポトフなどじっくり煮込む
などの調理が向いています。
ステンレス鍋は2種類ある。単層鍋と多層鍋の違い
実は、ステンレス鍋には大きく分けて単層鍋と多層鍋という2つの種類があります。種類によってつきやすい汚れが少し異なるので、簡単にそれぞれのタイプについて説明しますね。

単層鍋とは
単層鍋は、ステンレス素材だけで作られた鍋のことです。熱伝導率が低いというデメリットを補うため、薄くて軽い作りのものがほとんどです。
昔はアルミや銅製が主流だった雪平鍋やケトルも、最近では耐久性がありIHコンロにも対応するステンレス製が好まれるようになってきました。
■単層鍋のメリットは?
ステンレスの単層鍋は「お湯を沸かす」「ゆでる」といった調理に向いています。あたたまるまでの時間が早く、汚れもほとんどつきません。なので、使い方に気を付けていれば、普段のお手入れだけで十分きれいに保てます。
■単層のステンレス鍋で気を付ける点は?
単層鍋の注意点は、熱が分散しにくいため「焦げやすい」という点。カレーやシチューなど、具材を炒めてから煮込む料理には、厚手のステンレス鍋やホーロー鍋など、熱を均一に伝える多層鍋の方が適しています。
■おすすめの単層のステンレス鍋
バンビーノ ディープポット
アイテムを見る茹でる・沸かす・注ぐ・煮込むなどマルチに活躍するステンレス製のディープポットです。スープ作りにもちょうどいいサイズで、片手鍋やケトルとしても使えます。深さもしっかりあって、2人分のパスタを茹でるのにもぴったり。ちょっと使いから一人暮らしの方まで幅広くおすすめできるアイテムです。
多重構造鍋(多重層鍋)とは
多層鍋とは、2枚のステンレスの間にアルミなど他の金属の層がはさまれている鍋のことをいいます。
「熱しやすく冷めやすい」アルミニウムと「熱しにくく冷めにくい」ステンレスを、特殊技術によって重ね合わせているため、熱しやすく冷めにくいという両方の金属の長所をあわせ持った鍋になっています。
■全面多層と呼ばれるステンレス鍋がおすすめのワケ
中でも「全面多層」と呼ばれるタイプは、熱がより効率的に伝わりやすく、熱ムラなくおいしく仕上がります。予熱調理に向いており、鍋によっては無水調理もできるので、料理好きの方ならひとつは持っておいて損はないアイテム。他の鍋より値段は少々高めというデメリットはありますが、焦げ付きにくく汚れにくいというのがうれしいポイントです。
■鍋底だけ多層になっている鍋には注意が必要
多層鍋の中でちょっと気をつけたいのが、鍋の底の部分だけが多層構造になっているもの。多層構造になっていない側面は高温になりやすく、全面多層の鍋に比べて焦げつきやすい傾向があります。
また、短時間の空だきでも底面が変形してしまうことがあるので、使用時には十分気をつけてくださいね。
■おすすめの多重構造鍋
「ビタクラフト」アリゾナ両手鍋
アイテムを見る熱しやすく冷めにく全面多層構造のステンレス鍋。その中でも最もスタンダードな人気モデルです。容量は5.7リットルで、カレーやおでんにもぴったりな大きめサイズ。ゆでる・焼く・煮る・炊く・揚げる・蒸す・炒めるといった調理に使えるおすすめの両手鍋です。
ステンレス鍋でやってはいけないこと
ステンレス鍋はサビにくく、衝撃にも強い丈夫な素材ですが、長く愛用するためには気をつけたいポイントがあります。ここでは、ステンレス鍋で避けたい使い方についてご紹介します。
「焼く」「炒める」ことはしない

上の写真は、私が愛用している雪平鍋です。数年使用している割にはきれいな方だと思いますが、実は一度だけ派手に焦げつかせたことがあります。
あまりに軽くて扱いやすいため、ついフライパン代わりに使ってしまったのです。その結果、具材が鍋底にくっついて真っ黒に焦げつき、落とすのにもかなり苦労しました。
カレーやシチューなどのレシピには、「鍋で具材を炒める」と書かれていることがありますが、下ごしらえはステンレス鍋ではなくフライパンで行い、そのあとステンレス鍋に移して煮込むようにすると安心です。
硬すぎるスポンジやたわしは使わない
ステンレス鍋が焦げ付いてしまった場合、硬い素材のスポンジやスチールたわしのようなものでゴシゴシこすりたくなってしまいますよね。ステンレスは丈夫とはいえ、強くこすると表面に傷がついてしまいます。
また細かい粒子のメラミンなどのスポンジで洗っているとくもったように見えることも。実はこれ、目に見えない細かい傷が付いた状態。「くもってしまった!」と焦ってさらにこすると、ますますツヤが失われてしまいます。
多少傷がついても問題はありませんが、ステンレス特有のツヤを長く保ちたいなら、強くこするようなお手入れは避けた方がベター。
もしツヤの変化が気になるようであれば、最初からツヤ消し仕上げのステンレス鍋を選ぶのもおすすめです。
サビた他の金属素材のキッチンツールと一緒に収納しない
ステンレスは「サビにくい」とはいえ、油断は禁物。鉄や銅、アルミなど、サビているキッチンツールと接触するとサビが移ってしまうことがあります。
よくあるのが、「サビやすい素材の鍋と重ねて収納していた」というパターン。また、包丁や金たわしなどサビやすい金属製品から、いつの間にかステンレス鍋にサビが移ってしまうケースもあります。
これは「もらいサビ」という現象で、そのまま放置するとステンレス自体がサビてしまうことも。
ステンレス鍋は、なるべく他の金属素材に触れない状態で収納しておくようにしましょう。
水気を残さない
ステンレスは塩素に弱く、水道水に含まれる微量の塩素が蓄積すると、変色の原因になることがあります。
のちほど変色してしまったステンレス鍋のお手入れ方法もご紹介しますが、できれば変色を防ぐためにも、水気はしっかり拭き取りたいものです。
水道水で洗ったステンレス鍋は、水切りラックにそのまま放置せず、布きんやキッチンペーパーでしっかり拭き取ってから乾かすのがベストです。
ステンレス鍋が変色するワケ
「毎回丁寧に洗っているのに、ステンレス鍋が変色した!」なんてことありませんか?
茶色や虹色、白など、色によってその原因はさまざまです。知らずに間違ったお手入れをしてしまうと、色が落ちないだけでなく、大切なステンレス鍋を傷めてしまうことにもなりかねません。
ここでは、変色した色別にその理由を説明します。くわしいお手入れ方法は下記の記事も紹介していますので、参考にしてみてください。
お手入れしていても、茶色に変色するワケ

特に吹きこぼしたり焦がしたりした覚えがないのに、鍋の側面が薄茶色に変色することってありませんか? これは、ステンレス製の調理器具ではよく見られる熱変色(テンパーカラー現象)と呼ばれるものです。
ステンレスの表面を保護している「不動態皮膜」が、コンロの火などで加熱されることで変色を起こします。主な原因は、空焚きや強すぎる火加減。
衛生的に問題はありませんが、やっぱり見た目が気になる……という人も多いはず。そんなときは、「ステンレス専用クレンザー」で磨くときれいに落とすことができますよ。
虹色のシミが付くワケ

購入して間もない新しいステンレス鍋を使っているときに、虹色のシミのようなものが気になることがあります。
この変色の原因は水です。水道水に含まれる微量のミネラルやイオン、あるいは水道管に使われている鉄や銅などの成分が、蒸発する際にステンレス表面の皮膜に付着して虹色に見えるのです。
そのまま使用しても、衛生上や健康上の問題は特にありません。
とはいえ、見た目が気になる方も多いでしょう。
普通に水洗いや食器用洗剤で洗っても落ちない場合がありますが、クエン酸(食酢でも可)を使うと簡単にきれいにすることができます。
落とし方の詳細は、以下の記事で紹介していますので、参考にしてみてください。
新品のステンレス鍋を拭くときにつく「黒い汚れ」のワケ
買ったばかりの新しいステンレス鍋を拭くと、黒いものが付着することがあります。
「いったい何の汚れ!?」と驚くかもしれませんが、実はこの黒いものの正体は、鍋の製造時に使われた研磨剤の残りカスや、ステンレス表面の不動態皮膜がこすれて落ちたものです。
鍋のパッケージや説明欄には、ほとんどの場合、次のような注意書きがあります。
「初めてお使いになる際には、製造時に使用する研磨剤の残りカスが落ちきれずに付着している場合もあるため、食器用洗剤を付けたスポンジなどで十分にこすり洗いしてください。それでも付着する場合は、水を入れて沸騰させ流し捨てたり、さらに洗浄してください」
「表面のバリア(不動態皮膜)をこすり落としてしまうと、サビてしまうのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれませんね。
でも、心配はご無用! 不動態皮膜は、はがれたり傷付いたりしても、空気中の酸素に触れている間は何度も再生します。この仕組みによって、ステンレス表面は常にサビから守られているんですね。
白い斑点が出るワケ
不動態皮膜によって表面が守られているステンレス鍋ですが、使い方によっては上手く機能してくれないことがあります。
特に、鍋の表面に水垢とは違う白っぽい斑点が見られたり、その周囲が変色している場合は要注意です。これは、酸や塩素が原因の孔食(こうしょく)と呼ばれる腐食現象のひとつです。
孔食は、調理物に含まれる塩分や、水道水に含まれる塩素が付着することで発生します。そのまま使用してもすぐに問題になるわけではありませんが、使い方に気をつけないと症状が進行してしまうことがあります。
たとえば、パスタや青菜などを茹でる時に塩を入れることがあるかと思いますが、その際に塩をよく溶かすように注意しましょう。
また、塩分を含む料理をした後は、いつも以上によく洗って、しっかりと水気を拭き取ってから保管するようにしてくださいね。
鍋や食材が黒く変色するワケ

調理中に、鍋や食材が黒く変色すると、思わずびっくりしてしまいますよね。この変色は、買って間もない新しい鍋を使った場合(ステンレス鋼の表面の酸化皮膜が安定していないため)や、長時間食材を鍋に入れたまま放置すると発生することがあります。
変色の原因は、山菜、レンコン、ごぼう、ほうれん草……など、アクの強い食材に含まれている「タンニン」。これがステンレス鋼の主成分である鉄と反応して、変色が起きることがあるのです。
変色しても使用上の問題はありませんが、見た目が気になる方もいるでしょう。その場合は、食器用洗剤では落ちないため、ステンレス専用のクレンザーでこすり落とすのがおすすめです。
正しいステンレス鍋のお手入れ方法
ステンレス鍋の普段のお手入れは、それほど難しくありません。台所洗剤とスポンジで洗ってから、しっかりとすすいで、布きんで水気を拭き取るだけです。
食材がこびりついていたり、軽い焦げつきがある場合は、やや硬めのナイロン不織布スポンジか、パーム椰子(ヤシ)素材のタワシを使うとよいでしょう。
それでも焦げたり、サビたりした場合のお手入れ方法については、次にご紹介します。
ステンレス鍋の焦げの落とし方

ステンレス鍋の焦げは、まずお湯でふやかしてスポンジで落とすのが一般的。しかし、頑固な焦げの場合は以下の方法を試してみましょう。
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重曹を使って落とす
水1に対して重曹3の割合で混ぜた重曹ペーストを作ります。焦げに重曹ペーストを塗り、ラップで覆ってしばらく放置した後、スポンジなどでこすって落とします。
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鍋磨き用クッション研磨剤で磨く
細かい粒子が入った鍋磨き用のスポンジで焦げをそぎ落とす方法です。
早めの対処が大事!サビが出てきた場合の対処方法
先ほども触れましたが、ステンレス鋼は「サビにくい」とはいうものの、決してサビないわけではありません。たとえば、調理物に含まれる塩分や水道水に含まれる塩素には弱い性質があります。
また、気をつけていても、ついうっかり発生してしまいがちなのが「もらいサビ」です。放置は禁物。見つけたら、サビによる腐食が進む前に、早めに対処しましょう。
<ステンレス鍋のサビのお手入れ方法>
万が一サビが出た場合は、スポンジなどにクレンザーをつけ、調理器具の表面の筋目(研磨目)に沿って、サビをこすり落とします。
きれいになった後は、よく水で洗い、水気をしっかり拭き取ってから保管しましょう。
<ステンレス鍋、重曹を使ったサビ落とし方法>
専用クレンザーがない場合は、100均などでも入手しやすい重曹でも代用することができます。重曹が持つ研磨性を利用した方法なので、お手入れには粉末の重曹をご用意下さい。
手順は以下の通りです。
- スポンジを使って鍋を軽くこすり、水洗いしてキレイな状態にします。
- サビの部分に、粉末の重曹を振りかけます。
- そのまま5~10分置きます。
- スポンジでこすってサビを落とします。
- 布きんで重曹と水分をしっかり拭き取ります。
これはステンレス鍋の場合のお手入れ方法です。アルミ素材など重曹が使えない鍋には使用しないでください。場合によってはサビがひどくなる可能性があります。
ステンレス鍋のお手入れに使える専用アイテム
ここまでご紹介したお手入れ方法の中でも何度か出てきている、ステンレスに使える「クレンザー」や「ステンレス専用クレンザー」。クレンザーといっても、含まれている研磨剤の割合や粒子の細かさによって、いくつか種類があります。
お手入れの際には、「ステンレス鍋専用」と書かれているものを選ぶと失敗が少ないですが、それ以外にも使用できるものがあります。
| 種類 | クリーム | ペースト | 粉末 |
|---|---|---|---|
| 研磨剤の割合 | 約20~50% | 約45% | 約80~90% |
| 粒子 | 細かい | やや細かい | 粗い |
どれも「使えない」というわけではありませんが、鍋の表面にできるだけ傷を残さないためには、クリームタイプやペーストタイプを選ぶとよいでしょう。
頑固な焦げには、粒子が細かく研磨剤が多めのものがおすすめです。ペースト状のクレンザーでは、「ハイホーム」などが焦げつきにも効果が高く、成分的にも安心して使えます。
ハイホーム
アイテムを見る化学合成成分を使わず、独自の方法でつくられた洗剤。キッチンはもちろん、バスルームやトイレの掃除、衣類やカーペットのシミ落としにも使えます。
<クリームタイプのクレンザーの使い方>
「クリームタイプってあまり効果を感じない……」という方は、もしかするとスポンジに吸収されて、うまく研磨できていない可能性があります。
クリームタイプのクレンザーを使う時は、スポンジにラップを巻いてから使うと効果的です。
上手に使えば一生モノ!ステンレス鍋と上手なお付き合いを
ステンレス鍋は正しいお手入れ方法を知っていれば、長く使えて買い替えがほとんど不要。一生モノと呼べるほど長持ちさせることができます。
ちょっとした使い方や保管方法に気をつけるだけで、お手入れ自体もぐっと楽になりますよ。
お気に入りの鍋をきれいな状態で長く使うためにも、今回ご紹介したお手入れ方法をぜひ実践してみて下さい。
参考資料
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan 33(2), 157-165, 2000-05-20
料理道具専門店「フライパン倶楽部」(検索日:2021/10/8)
ビタクラフト「ビタクラフトの使い方(ステンレス鍋・フライパン)」(検索日:2021/10/8)
株式会社ヨシカワ・ライフスタイル事業部「よくあるご質問」(検索日:2021/10/8)
貝印「よくあるお問い合わせ(ステンレス鍋)」(検索日:2021/10/8)
